身体的拘束最小化のための指針

身体的拘束最小化チーム会
2025 年 5 月 8 日

Ⅰ.身体的拘束最小化に対する基本的な考え方
身体的拘束は患者の自由を制限し、身体的・精神的な弊害をもたらす可能性があるため、原則として行わないことを基本方針とする
当院は患者の尊厳を守り、尊重し、安易に拘束をすることなく職員一人ひとりが拘束による身体的・精神的弊害を理解し、緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束をしない診療・看護の提供に努める

1.身体的拘束の定義
抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限を言う
2.身体拘束等禁止の対象となる具体的な行為

(1)徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る
(2)転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る
(3)自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む
(4)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る
(5)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける
(6)車椅子や椅子からずり落ちたり立ち上がったりしないように、Y 字型拘束帯や腰ベルト、 車椅子テーブルをつける
(7)立ち上がる能力のある人に立ち上がりを妨げるような椅子を使用する
(8)脱衣やおむつ外しを制限するために、つなぎ服を着せる
(9)他人への迷惑防止を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る
(10)行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる
(11)自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する
「身体拘束ゼロへの手引き」 (厚生労働省「身体拘束ゼロ策戦推進会議 2001」)

3.身体拘束等禁止の対象とはしない具体的な行為
(1)自力座位を保持できない場合の車いすベルト、またはベッドの柵(サイドレール)
*肢体不自由や体幹機能障害があり、残存機能を活かすことができるよう安定した体位を保持することを目的とする行為については、その行為を行わないことがより危険であると判断するため

(2)整形外科疾患の治療であるシーネ固定等
(3)身体拘束等をせずに患者を転倒や離院のリスクから守る事故防止対策としての、離床センサーの使用
*行動の制限や抑制を目的とするものではなく、患者の行動をいち早く把握し、患者のニーズを満たすようなケアにつなげるためのものであるため
(4)鎮静を目的とした薬物は基本的に行わず、以下の適正使用基準に基づき対応する
・ 鎮静薬の使用は、患者の状態を慎重に評価した上で、必要最小限に留める
・一過性の不眠に対しては、薬物療法を安易に選択せず、環境調整や心理的支援を優先する
・向精神薬の使用は、患者の行動を制限する目的ではなく、適切な治療の一環として行う

・長期的な薬物使用による耐性や離脱症状のリスクを考慮し、定期的な評価を行う
◇当院において想定される拘束
転落防止帯、四肢抑制、ミトン、つなぎ服(介護衣)、4 点柵、車いす用安全ベルト、クリップ式センサー(てんとうむしセンサー)など

 

Ⅱ.緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合の対応
1.緊急・やむを得ない場合の 3 要件
「切迫性」「非代替性」「一時性」の 3 要件をすべて満たし、緊急やむを得ないと認められた場合にのみ、本人・家族への説明、同意を得たうえで実施する。また、身体拘束を行った場合は、その状況についての記録を行い、できるだけ早期に拘束を解除するよう努める
切迫性:患者本人または他の患者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替えするケアの方法がないこと
一時性:身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること

2.緊急やむを得ない場合とする実例
(1)気管切開・気管挿管チューブ・中心静脈カテーテル・経管栄養チューブ・膀胱留置カテーテル・各種ドレーン等を抜去することで、患者自身に生命の危機および治療上著しい不利益が生じる場合
(2)精神運動興奮 (意識障害、認知機能障害、見当識障害、薬物依存、せん妄など)による多動・不穏が強く、治療上著しい不利益が生じる場合、または自傷・他傷など害を及ぼす危険性が高い場合
(3)ベッド・車椅子からの転倒・転落の危険性が著しく高い場合
(4)検査・手術・治療で抑制が必要な場合
(5)その他の危険行為(自殺・離院・離棟の危険性など) がある状態

3.その他の日常ケアにおける基本方針
(1)環境調整: 転倒防止のための適切なベッド配置や歩行補助具の提供を行い、患者が安全かつ自由に移動できるよう調整する
(2)コミュニケーション:安心して入院生活が送れるよう、言葉や対応等で、患者の精神的な自由を妨げないように努める
(3)代替手段の活用: 身体的拘束の代替として、患者の行動を制限しない方法を優先する
(4)行動制限の評価: 行動制限が必要な場合は、医療チームで協議し、最小限の制限に留めるよう努める

Ⅲ.身体拘束最小化のための組織体制
1.身体的拘束最小化チームの設置
(1)設置
身体拘束を最小化することを目的として、身体拘束最小化チームを設置する
(2)役割
①身体拘束の実施状況を把握し、職員に周知する
②身体拘束最小化に係る指針の見直しを行い職員に周知する
③日常的ケアをモニタリングし、患者の人権を尊重した適切なケアが実施されているか確認する
④職員対象に身体拘束最小化に係る研修を実施する。
⑤定期会議は 2 月に 1 度開催し、必要に応じて臨時会議を開催する
(3)構成と責務
委員長:身体的拘束最小化チームの統括を行う
副委員長および医師:治療現場の統括を行う。医師は身体的拘束を受けている患者の状況を把握し記録する
看護局長:病棟師長へ、各部署の身体的拘束状況の把握と評価するよう指導する
GSM:身体的拘束が安全かつ適正に行われているか、評価・指導を行う
各部署チーム会看護師:部署の身体的拘束状況を把握し、評価、記録の指導を行う
リハビリテーション科:運動能力を評価し、安全な療養生活を送れるよう指導する
薬剤課:薬剤が適正に使用されているか、評価と指導をする
医事課:院内全体の身体的拘束状況をまとめ、分析した資料を作成し、配布する
(4)任期
任期は 1 年とする。ただし再任は妨げない。欠員が生じた場合は、速やかに公認を充てる

Ⅳ.身体的拘束最小化のための職員教育に関する基本方針
患者に関わるすべての職員に対し、身体拘束禁止と人権を尊重したケアの励行を図るための教育を行う
1.該当する職員を対象とした、身体的拘束に関する教育研修を定期開催する(年1回以上)
2.その他、状況に応じ必要な教育・研修を実施する
3.研修の実施日、実施場所、方法、内容等を記載した記録を作成する

Ⅴ.指針の閲覧について
身体的拘束最小化のための指針は職員が閲覧できるようにし、当院のホームページでも公表する

Ⅵ.附則
この指針は 2025 年 5 月 8 日から施行する

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